榎木大明神2016年01月31日 16時33分06秒


熊野へと続くこの道
傍らには大木が聳え
木陰で人は休んだり喋ったり
何年も何年も
もうずっと長い間
数え切れないほどの人が
熊野へと続く
この道を往く

到達点は海だ
果てなどわからない
その海の向こう
補陀落フダラクという
観音菩薩の住む
老病死とは無縁の
憧れの地があるのだそうだ

憧れやまぬ人々は
無謀にも海に繰り出す
憧れ抱く人々は
果たして恋い焦がれたあの地を
踏むことができたであろうか
誰一人帰ってきた者はないので
それは誰にもわからない

皇帝に気に入られようと
不老不死の妙薬を求め
わざわざ大陸から来た者もいた
莫大な資金を拠出させた
稀代の詐欺師は
何を思いこの道を往っただろうか

都市が発展するに伴い
死は隠蔽されていく
いつの間にか人は
不老不死を疑わない
ビルに挟まったこの坂を登りきる手前
大木と小祠は
きっとそいつを引き剥がす

誰が死から逃れられようか
皇帝も将軍も
親しい人も
そして己れも
さよならの悲しみを背負い
来た道を還る
傍らの大木を見上げながら

榎木大明神

榎木大明神

榎木大明神

榎木大明神
大阪府大阪市中央区安堂寺町2丁目

コメント

_ フクスケ ― 2016年02月03日 17時44分31秒

これまた味のあるロケーションですこと。

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