亀戸香取神社 ― 2017年06月04日 22時21分12秒
ふつ ふつ ふつ
鋭利な刃先が彼奴の肉を削ぐ
ふつ ふつ ふつ
神の宿る剣
肉を断つ音
まだこのような平らな台地はそこになく
幾つもの小さな島が海の上に顔を出し
魚やら水藻やら
人はそこに糧を見つけ
日々を暮らす
とはいえ
そのような長閑な風景だけではない
すでにクニの支配構造は始まっている
支配者はいつも西からやってくる
最初に来たのは誰だ
亀戸香取神社の由緒によれば
藤原鎌足がここに神社を置いたのだそうだ
本当のところは誰にも解らないが
その頃すでに遠く大和朝廷の
支配が及んでいたということは言える
政治色のある神社が置かれるくらいだから
何らかの重要な拠点が
ここにはあったのかもしれない
このエリアの海運のボスとその集団
漁民であり時に兵力となるなど
きっとその始まりは
大和朝廷をさらに遡るだろう
祭神である経津主神フツヌシノカミは
藤原氏の祖神ということになっているが
その名前から
物部氏の匂いがする
フツは刃物を表すそうだ
そこら辺の話は
下総国の香取神宮で
いつか読み解きたいと思う
今や何故かこの神社は
スポーツ振興の神様になっている
吉田沙保里さんなど
有名アスリートが訪れているらしい
この日も色鮮やかな市民ランナー達や
サッカー少年達で
境内は賑わう
かつては亀戸三業地で賑わったことなど
誰も言わないし知りたくもない
ひっそりと
あの第六天が末社で鎮座するのを
誰も振り返らない
亀戸香取神社
東京都江東区亀戸3-57-22
稲足神社(境内末社)
祭神 面足神 惶根神 金山毘古神 宇賀御魂神
諏訪神社〜夕やけだんだん ― 2017年06月24日 19時16分54秒
夕暮れに思想家は
商店街の賑わいに身を任す
夕暮れに思想家は
湯気の立つ台所の窓を過ぎ
緩やかな段々を降りていく
規格された街路の上で
誰一人知った顔のない群衆の中で
孤独に強く心を定めよと
思想家は詩を編む
「ぼくの孤独はほとんど極限に耐えられる
ぼくの肉体はほとんど苛酷に耐えられる
ぼくがたおれたらひとつの直接性がたおれる
もたれあうことをきらった反抗がたおれる」
(「ちいさな群への挨拶」吉本隆明)
科学技術を舐めてはいけないと
反原発主義者を批判した思想家
だけどそんな科学技術に
人はついていけてない
理論を現実化する工学や施工技術が
理論についていけてない
津波の到達高さの想定をするのは人の頭で
圧力容器や配管の溶接をするのは
原子力発電所の建設現場で
フランジのボルトを一個一個締めるのは
人の手なのだ
科学技術が社会に及ぼす影響を
誰が一体考えているのだろう
人工知能がそう遠くないうちに
人の知能を超えて物を考え出すそうだ
そうなると人にはその後
もう何が起こるのか誰にも
予測不可能な世界が始まるのだそうだ
なあ
俺たちは一体
何がしたかったんだっけ?
思想家はもういない
その最後に
ひきこもれ
ひとりになって思考せよと
語った言葉は
薄皮で繋がることに疲弊した僕等に
重く深く突き刺さる
建御名方神タケミナカタノカミ
長野の山奥へ逃げ込んだ
ひきこもりの神
独自の個性は強さとなって
太田道灌の城の防衛の要となる
思想家はもういない
難解な言葉を必死で駆使した時代は過ぎ
東大を出たエリート女がハゲだの死ねだのと
糞のような言葉を吐く時代
それでも次々と偉そうに
摩耶化しを垂れ流す奴等が後を絶たない
新たな擬制は生まれ
その終焉はまだ先なのか
思想家が歩いたという
夕やけだんだんを降りる
商店街は祭りのような賑わい
真昼間から店先でビールなんて飲んで
みんな楽しそうだな
それがほんとうのことだよと
思想家は言っていたに違いない
諏訪神社
東京都荒川区西日暮里3-4-8
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