元神明宮2017年09月10日 11時35分10秒


漆黒の不安な雲が俺の頭上に拡がっている
来た
長く尖った爪
三本しかない指は
鳥の足のように不気味だ
彼方此方に金属のような剛毛
腕だ
巨大な腕が
俺の髪の毛を掴む

一太刀だ
血を吹き出して落下した巨大な腕を残し
暗雲は掻き消えた
刀の名は髭切
鬼丸とでも名を改めようか

母上
どうされたのです
わざわざ都まで
とにかくお寛ぎくださいませ
どうしたのです
母上

元神明宮の由緒によれば
徳川幕府が元神明の神体神宝を
芝大神宮に移すことに決めたという
その際
氏子等は激しく抵抗
神体を隠し
昼夜を問わず警護したという

祭神は天照大神
同祭神を配す芝神明への移設合祀の動機は
江戸城守護を目的とする
増上寺移設に伴う
施設統合の一環と見られる

再び元神明宮の由緒に戻るが
1005年に一条天皇の勅命により創建
渡辺綱ワタナベノツナの産土神であったことから
多くの武人に崇敬されたという

渡辺綱は源氏の流れを汲む武将
摂津国の渡辺党の祖であり
クラスや職場に必ず一人二人はいる
渡辺さんの祖である

渡辺綱の産土神がアマテラスというのは
どうにも結びつかないのだがどうだろう
渡辺綱の母親(養母)の産土神という説もあり
ますますその正体は
摂津国へ求めるのが妥当ではないか

渡辺一族については
坐摩神社〜ココニイルコトヲシル
を参照いただきたい

渡辺綱の出生地は諸説あるのだが
この港区三田の地も候補地の一つだ
晩年ここに隠居したという説もある
三田綱町という地名がかつてあり
綱坂という坂が現存
又の名を渡辺坂という

渡辺綱が鬼の腕を切り落とす有名な伝説は
遡ると古代の製鉄職人集団に辿り着くという
あるいはこの地に
すでにその末裔たちが
住み着いていたのかもしれない
芝公園には古墳もあるしね

三田は御田であり
伊勢神宮へ奉納する米を作る田
とされているが
土壌に水銀を含むゆえ
中毒死や障害を残す米として
食さず神に捧げたのが始まりのようだ
水銀は金の精錬や青銅の鍍金に用いられた
想像以上に古い時代から
人々は水銀を求めて移動を続けている

いずれにしても
元神明の祭神はアマテラスではなかった
この謎の祭神を徳川幕府は芝大神宮に合祀して
強力な守護のパワーアップを図った
明治天皇はそのことを知っており
奠都にあたり謎の祭神を崇め奉った

という見方をしてみた
真実かどうかは残念ながらわからない
疑いの目で見れば
神社サイドが縁も所縁もない
渡辺綱という有名人にあやかることで
アピール度を高めたかったと
見ることもできるが
西欧人が想像あるいは妄想だけで
架空の唯一絶対神を
創造するようなことを
日本人はしてこなかった
と信じている

元神明宮

元神明宮

元神明宮

元神明宮
東京都港区三田1-4-74