竜宮神社〜小樽のひとよ2017年05月14日 18時18分14秒


昨日まで正しいと信じていたことが
どうやら崩れ去ってしまったらしい
お前は間違っていたのだと
したり顔で奴等は言う

明治政府が札幌に開拓使を置いたのが明治2年
札幌からほど近い小樽が
石炭の積み出しや物資の中継港の街として
僅かな間に爆発的に発展する

東京大阪に次ぐ国内3番目の鉄道が敷かれ
日本銀行を始めとする金融機関が林立
船舶会社や商社が次々と進出してくる
金が集まり
物が集まり
続々と人が流入する

昔の日本人は
人が集まるところには遊郭を作らなきゃね
とすぐに考えたらしい
北郭と南郭と呼ばれた2カ所に
大規模な遊郭があった

幼い頃に
私はその南郭跡地で育った
もちろん遊郭の経営などは戦前の話で
戦争でも消失しなかった建物が
一般市民の住居として機能していた

中庭と回廊のある木造二階建ての建築
大仰な石垣と異常な幅を有する道路
仲之町や弁天町といった消された町名
明らかに吉原遊郭を模した区画
嘗ては水道山の金比羅大権現まで
本物の花魁道中が行われたという
その入り口には大門が在ったのだろう
大門湯という銭湯がまだ当時在った

戦地においても
遊郭を作らなきゃねという感覚は
当たり前だったのさ
不細工な銅像が取り沙汰されてるが
それが事の総てであるなんて思っちゃあいけない

箱館戦争の科で投獄されていた榎本武揚
釈放後は北海道の開拓使として活躍する
榎本は現在の小樽駅周辺の土地20万坪を
払下げにより取得している

この土地は
アイヌの聖地であった
祭祀が行われた土地
アイヌの神は
クマの格好で現れる
クマを殺した後は必ず
感謝を捧げ
祭祀を行い
クマから抜け出た神に機嫌よく帰っていただき
その肉を食い
毛皮を利用する

恐らくはアイヌの祖先の墓でもあっただろうか
この小高い丘の上に
榎本は神社を築く
祭神は桓武天皇
平安京を築いた天皇だ
東北の蝦夷制圧に最注力した天皇が
アイヌの聖地の上に置かれている

この竜宮神社のお祭りは賑やかだった
周辺の通りにはびっしりと屋台が立ち並ぶ
成人向け映画館なんかがあったこの辺は
子供の私にはお祭りの日以外は
禁忌の場所に思えていた

ほんの僅かな間に
怒涛の発展と急激な衰退を遂げたこの街
意図せず残された歴史的建造物に
内外から観光客が集まる
ガイド本なんかに煽られて
寿司やら蟹ばっか食ってたって
自らの正しさを信じて生きていた
人々の思いには気づけやしない

竜宮神社

竜宮神社

竜宮神社

竜宮神社
北海道小樽市稲穂3-22-11