明治神宮2014年06月01日 14時48分55秒

広大な明治神宮の杜は
人工的に造り出されたものだという
当時の造園科学の粋を結集し
100年後の植生遷移を予想して
多様な樹木を多層に植栽していったらしい
その後の手入れや施肥は不要だという

創建からあと数年で100年の今日
あたかも森の中にいるような
この参道に立ち
その仕事に改めて驚くばかりだ
やればできるんじゃねえか

ハコモノ行政が批判されるのは
建設コストもさることながら
維持管理に要するコストが
延々と馬鹿のように必要になる事だ

2020年のオリンピックに向け
神宮外苑の国立競技場を建て替えるという
年間6億円の維持費が
新設後は46億円になるらしい
50億円の収入が得られるのでオーケーという
何やらよくわからん金勘定

神宮外苑は当初
欧州のデザインをふんだんに取り入れ
中心部に広大な芝生と整然とした並木道
周辺に行くに従い樹木が濃くなり
景観を損ねることなくスポーツ施設を配置
抜群のセンスと美しいコンセプトでスタートする

外苑の竣工時に明治神宮奉賛会は

「外苑は明治天皇及び昭憲皇太后を記念し、明治神宮崇敬の信念を深厚ならしめ、自然に国体上の精神を自覚せしむるの理念を基礎とし、一定の方針を以て、今後、之が管理及維持修理上に於ても常に右理想を失わざる様御注意あり度事」
「上野、浅草両公園の如きとは其性質を異にするを以て、今後、外苑内には明治神宮に関係なき建物の造営を遠慮すべきは無論、広場を博覧会場等一時使用するが如き事も無之様御注意あり度事」

と「外苑将来の希望」という一札を
明治神宮宮司へ申し入れている

ところが戦後
進駐軍により各種競技場は接収され
芝生の美しかった広場は球技場に変えられてしまう
米兵はガムでも噛みながら
ベースボールに興じたに違いない

接収解除後は東京オリンピックのため
日本政府は発狂したように音頭をとり
乗馬道は高速道路に
ありとあらゆるオープンスペースは
スポーツ施設に転用
当初のコンセプトからは
見るも無惨な姿となって今日に至る

だから建て替えにあたって
今さら景観がどうのという議論でもないだろう
みんなサッカーやランニングやゴルフに忙しくて
そもそものコンセプトに思いを馳せる人など皆無だ
内苑を潰してスポーツ施設を
という声が出ないだけ
まだマシなのかもしれない

「外苑のオープンスペースとは、芝生の上で恋人同士が指を絡ませて語らい、腰を下ろした若妻のスカートの回りを幼児がキャッキャッとはしゃいで回り、また二十四時間戦う企業戦士が静かに一時の瞑想にふける そのような静寂な都市空間として存在しなければならないのである」(「東京都市計画物語」越澤明)





明治神宮
東京都渋谷区代々木神園町1-1