金刀比羅宮東京分社2014年07月03日 22時00分48秒

命を削って書き上げたのに
大乗経の写本は送り返された
落胆と怒りが崇徳上皇の身体に溢れる
遂にはその舌先を力の限り喰い切り
滴り落ちる血潮で
大乗経の奥に呪詛の誓文を書き付ける

我は日本国の大魔縁となる
この経を魔道に回向す

手足の爪は長々と伸び
髪は銀の針を突っ立てたよう
目はとびの目つきに似
柿の衣を羽織っている
怨念の塊となった上皇は
生きながら天狗になったと言われた

暑い夏の日
上皇は死んだ
都からの勅命が届くまで二十日間
屍体は腐敗を防ぐため泉に沈められた

柩が運ばれる途中
雷鳴とともに激しい雨が降る
濡れた柩からは上皇の血が滴り落ち
柩を置いた石が深紅に染まった

江戸時代に爆発的にブームとなった金毘羅参り
海上交通の守り神として有名だが
その起源は諸説あり定かではない
象頭山を中心とした山岳信仰から始まり
修験道や密教が融合していったらしい
そこに仏教の神が習合し
金毘羅大権現と呼ばれるようになる
その後さらに日本最大級の怨霊である
崇徳天皇が合祀され
独特の神格が形成されていく

得体は知れぬが
何か神々しいもの
そして強烈な怨霊の力
人々は惹かれ救いを求め祈り続ける

今年は崇徳帝の850年忌にあたるという
このところの異常なほどの突然の雷雨などは
俺を思い出せという崇徳帝の仕業
なんてことはねえか



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