天龍大神〜地図にない街42015年09月06日 17時53分56秒


男達は降りていく
無言のまま
紫の灯りの溜まる底の方へ
男達は降りていく
夜の底の底の方へ

古代の空には
鳶が飛び交い
非人が引きづる罪人の死骸を狙う
墓石の向こうに
五重塔が見える

寄る辺もない
捨てられた魂には
朝廷も寺院もなす術がない
せめて縋るのは
出自不明の龍神が相応しかったのか
明治の淫祠邪教の排斥にも
ほとんど相手にされなかったのか

都市は膨張し
非日常は外側へ追いやられる
鳶の飛び交う墓場の上に
巨大な飛田遊郭は出現した

破壊の後の非日常的な日常から逃れるべく
あの懐かしい非日常の世界へ人は集まる
外力によるパラダイムシフトへも
他に類のないメタモルフォーゼを遂げ
孤高の街が完成する

街は高い壁と龍神の結界に囲まれ
今はもう
地図にその名が刻まれることはない
女子供は決してここに
入っちゃいけない

消毒がじわじわと近づいている
広大なショッピングモールと
綺麗なマンション群が
結界の街を取り囲む
女子供がカラカラと笑う
横を通り過ぎる静かな男達には
頼むから構わないでくれ

男達は降りていく
夜の底の底の方へ

天龍大神

天龍大神

天龍大神
大阪府大阪市西成区山王2-1-19

難波八阪神社2015年09月13日 15時57分21秒


バタバタと人が倒れる
突然襲う嘔吐
何が起きているのだ
船場の町は恐怖で震え上がる
薄れゆく意識の中で
俺は見たんだ
三尺はある頭のツノ
逞しい体躯で路上に立つその姿を
きっと
俺達を救ってくれる
牛頭天王
俺は叫んだ

細菌やウイルスなどの
感染性病原体が伝染病の原因であることを
人類が科学的に知るのは19世紀以降
それまでは
原因不明で次々と人が死んでいくのを
疫病神の仕業であると
得体の知れない何かから
どうか守ってくださいと
ひたすらに神に祈るしかなかった
あの有名な祇園祭の起源は
そんな得体の知れない
恐怖への祈りである

祀られているのは
牛頭天王という異形の神
異形ゆえにか
明治政府はこの神様を嫌った
淫祠邪教の神であると
暴力的に排斥を始めた
神社サイドはこれに屈し
元々同一神であるという
こじつけのようなロジックで
祭神を素戔嗚尊スサノオに変更する

だが既にその頃には
西洋医学の流入と進歩により
伝染病の原因も治療法も確立し
牛頭天王の役割と効力は
失われていたのかもしれない
明治政府はテンノウという呼称が
きっと気に入らなかったのだろう

こうなると後は
個々の神社の経営方針の話になる
生き残りか廃業か
本家の京都の八坂神社は
荘厳華麗な祭りで人を集め
今や世界的にも有名な
観光スポットとして名を馳せている

さてここ大阪難波の八阪神社
坂の字を大阪の阪にするという
差別化の施策を打つ
優位性は疑問だが
プライドは十分に感じることができる
そしてさらに
さすが商人文化を生み出した大阪の
パワーが炸裂するのが
この巨大な獅子頭の構造物である
大きく開いた口の中が舞台になっていて
どうやら夜は目が光るらしい
よほどの実力派大物バンドでない限り
ここでライブをやっても
文字通り舞台に食われてしまうことだろう

難波八阪神社

頑張ってはいるのだけど
今ひとつ知名度が低いのが残念
この日は中国人と思しき人達が
獅子頭の前で写真を撮ったりしてたので
人気に日がつくのはこれからかもしれない
世界で評価されれば
ようやく日本人も気付くだろう
グリコのネオンと並んで
獅子頭舞台が大阪の人気スポットになる日も
きっと近いかも

難波八阪神社

難波八阪神社

難波八阪神社
大阪府大阪市浪速区元町2-9-19

三光神社〜真田山陸軍墓地2015年09月21日 18時03分45秒


時は明治4年
西欧列強に負けてたまるかと
政府は大日本帝国陸軍を組織する
陸軍の拠点として大阪が選ばれ
大阪城の周辺は
急速に軍事都市化する

陸軍第四司令部
砲兵工廠
お城の周りに
次々と軍事施設が出現する

真田幸村が陣を張ったと伝わる
由緒ある大阪城防衛の地
真田山と呼ばれる丘陵に
陸軍墓地が築かれた

傍にあった神社
何故だろう祭神が
アマテラス・ツクヨミ・スサノオの
三貴神へと変更している
以前の祭神名はどこにも出てこない
政府や陸軍が関与したのかは
よくわからない

陸軍の最初の敵は皮肉にも
反乱を起こしたサムライ達であった
自分と同じ日本人相手の戦争
大阪に負傷兵や遺体が続々と送り返されてくる
戦病死者はここ真田山陸軍墓地に埋葬された

西南戦争の後
日清日露と墓標の数は激しく増え続ける
あまりにも戦病死者が増えるので
階級ごとの合葬墓で間に合わせるようになる
もう太平洋戦争の頃には
いちいち埋葬などしてられなかったのか
遺骨は納骨堂に押し込められた

敗戦後
陸軍省は廃止
陸軍墓地は大蔵省の管轄となり
土地は大阪市へ貸与され
実質国の関与はない
今や遺族らによる維持会で
なんとか管理されている状態だという

色んなことが隠されて
隠しきれないものは
知ったことかと放置される
荒れ放題の墓碑群
ただ朽ちていくのを待っているようだ
誰も責任をとらない
そんな事態がきっとまた繰り返される

三光神社

三光神社

三光神社

三光神社
大阪府大阪市天王寺区玉造本町14-90

大阪護国神社2015年09月27日 16時07分54秒


「平和安全法制は国民の命と平和な暮らしを守るために必要なもの。安全保障環境が厳しさを増す中、法案の成立によって、子供たちに平和な日本、安定した繁栄した日本を引き渡していくことができると確信している」(安倍晋三総理大臣)

大阪護国神社の祭神は
大阪出身あるいは所縁のある
十万五千余柱の英霊
戦後のGHQによる神道指令によって
仁徳天皇に置き換えた時期もあるが
昭和27年サンフランシスコ講和条約の締結後
再び英霊たちが祭神として復活した

広々とした境内が清々しい
昭和天皇 今上天皇も参拝された
戦後の大阪の歴史を伝える
意義深い神社だ

境内にはたくさんの慰霊碑が並び
戦争で亡くなった諸先輩たちを偲ぶことができる
ここ数年の間には新たに
特攻兵の碑が建つなど
「戦後」は未だ
延々と継続していることが実感出来る

日本は
戦争をしない国だと
てっきり思ってたのに
憲法があるために戦争することができない国
だったらしい
戦争をしない国を続けるためにはではなく
戦争をできる国にするためにはが
いつしか
論点になってしまった

どうやら
長い間戦争をしなかったので
誰も戦争がわからなくなり
戦争を火事に例える大人が現れ
例える方も例えられる我々も一様に
ますます馬鹿を晒す

歴史が喜劇として繰り返される
笑える結末はどうにも期待できないが
慰霊碑だの神社だのを
性懲りもなくまた建て続けるのだろうか

思想のない無根拠な言葉の羅列で
誰の心が動くだろう
自分の頭で考えて
自分の言葉で言ってくれないと
何を言ってるのか
さっぱりわからない

思考は放棄され短絡するこの時代
深い思索の中で紡ぎ出される
言葉を聞きたい

「もしも おれが呼んだら
       花輪をもって遺言をきいてくれ
 もしも おれが死んだら世界は和解してくれ
 もしも おれが革命といったら
          みんな武器をとってくれ」
(「恋唄」吉本隆明)

大阪護国神社

大阪護国神社

大阪護国神社

大阪護国神社

大阪護国神社
大阪府大阪市住之江区南加賀屋1-1-77