柴又八幡神社2019年07月07日 17時52分51秒


男は言う
ここにいる訳にはいかないよ
あのタクシーの運転手のところに
今夜は泊めてもらうさ

女は言う
つまらないわ

男は立ち去ろうとするが
開けた襖の先は押入れだった
含羞む男
そして静かにそこを後にした

葛飾柴又といえば帝釈天と
昭和世代の私達には
すっかり馴染みのあるところ
いつでも参道は大賑わいで
映画の通りの雰囲気を
今でも充分感じることができる

京成柴又駅前には寅さんとさくらの銅像と
今ではもう珍しくなってしまった灰皿が置かれてる
そういえば寅さんは煙草吸ってただろうか
当たり前のように大人はみんな煙草を吸ってた時代
僕らはそんな自由をいつしか手放した
永遠に戻らない自由な日々

煙草を吸わない人は知らないだろういつ頃からか
煙草の箱には呪いの言葉が綴られている
肺気腫云々と能書き垂れてはいるが要は
あんた死ぬで
あんた死ぬでと綴られている

帝釈天と京成金町線を挟んで反対側に
柴又八幡神社がある
帝釈天に人が集まり過ぎて
この境内は人影も疎らで寂しい

八幡神は託宣の神
所謂神のお告げというやつである
その登場は古く
仏教が伝わった頃の西暦500年代くらいらしい
奈良に大仏を建てちまいなとか
道鏡を天皇にしたらあかんとか
何せよく喋る神様なのだ

神様が言っているのだからと
時の政治家は大いにそれを利用した
人々もまたその言葉を信じたのだろう
全国に数多く分布する八幡神社は
この託宣システムの
出先機関として機能していたに違いない

ここ葛飾八幡神社は
古墳の上に建っている
被葬者はわかっていないが
八幡神が後からやって来て
どかっと上に乗っかったという訳だ
そこにいた人たちは
突然現れた新しい神様の言葉を
どういう気持ちで聞いただろうか
すんなりとその言葉は受け入れられただろうか

託宣など無効となった時代
政治家の薄っぺらい言葉には
皆が辟易している
心の無い言葉が氾濫する
それは薄く薄く尖って人の心を刺す

言葉に傷つく人がいる
学校にも会社にも行けなくなるほどだ
言った人間はそこまで考えてない
呪いをかけようなんて意図はないだけに
その浅墓さは何よりも罪深い
言葉はただの音声だ
ただの空気の振動なのだ
空気の振動が
君の鼓膜を震わせてるだけさ

それを言っちゃあ
お終いよ
溜まったり貯めてる言葉もあるだろうが
その一言が人生を左右する事もあるって
俺逹は寅さんに学んだろ
そうやって
今日も涙の日が落ちる
日が落ちる

柴又八幡神社

柴又八幡神社

柴又八幡神社

柴又八幡神社
東京都葛飾区柴又3-30-24

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://dandyhandsomeboy.asablo.jp/blog/2019/07/07/9112683/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。