吉原神社2013年04月29日 17時40分11秒

いつの頃から在ったのかはわからない
田圃の中にぽつんと
玄徳(よしとく)稲荷社は在った

この小祠の周りで突如
大規模な土木工事が始まる
9mもの幅を持つ堀が囲む
京間135間(約266m)×180間(約355m)の浮き島が出来上がる

方形の四隅が東西南北を指し
中央を貫く大通りと
交差する整然とした区画
大通りに繋がるただ一つの入口
鬼門の方角にあるこの入口には
物々しい大門が設置される

土手から大門への下り坂は
S字状のカーブが施され
外部から容易には
中の様子を窺うことが出来ない

玄徳稲荷社はこのカーブの脇にリニューアル
さらには
方形の四隅に榎本稲荷、明石稲荷、開運稲荷、九朗助稲荷が
それぞれ配置
巨大な結界が田圃の真ん中に形成される

結界は邪気の侵入を防ぐが
内部で死んだ者の霊魂や
無数の怨恨や後悔や執着は出口を失い
土地の記憶となって内部に溜まり続ける

現在
堀は全て埋立てられ
四方の道路は連結した
五柱の稲荷社は合祀され
吉原神社として移設されている

結界は破壊されたが
今でも地図や航空写真で
明確にこの結界の地を確認することが出来る
S字状のカーブも健在だ
奇麗に舗装されている姿が滑稽に映る

いくら吉原の名前を消したところで
此処は変わらず吉原で
深すぎる土地の記憶を
永久に抱え続けるしかない


吉原神社
東京都台東区千束3−20−2


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