鳥見神社2019年04月21日 17時13分23秒


激しい戦の末
饒速日ニギハヤヒの王朝は敗北した
ニギハヤヒの娘である御歳ミトシが
磐余彦つまり神武天皇の妃となることで
政治的決着を図ったのだろう
以後大和朝廷の支配が始まり
それは新しい令和の世にまでも繋がっている

一方で主人を失った人達はどうなっただろう
他所から来やがってと腹の中では思いながらも
上手いこと折り合いをつけて
その実権を掌握し続けたのが
物部氏ではなかったか
拠点に留まり続け
ある時期まで実質の政権を揮っていたのは
歴史が示す通りである

また一方で
こんな所に居られるかと
東へと移動する物部ほかニギハヤヒ一派もいた
神武軍と激しくぶつかり合った
長髄彦もまたその一派
彼らがその後
蝦夷と呼ばれるようになったという説もある
そんな一派が恐らく
たどり着いて暮らしを始めた場所の一つが
千葉の利根川と印旛沼に囲まれた辺り
鳥見神社という神社が
この周辺だけに20社以上確認できる
祭神は言うまでもなく
饒速日命
彼等は再起を決して祖神を祀り
その日を延々と待ち続けていた
のかもしれない

白井市富塚にある鳥見神社は
富士講の石塔や無数の庚申塔がズラリと並び
まさに民間信仰のオンパレードといった境内で
周りは今や新築の家が立ち並ぶニュータウン然とした
何ら面白味もない風景の中にあって
古代からずっと繋がる歴史が
ここにはあるのだよと言われてる気がするそんな
素敵な神社だ
そして極め付けは
なかなかに珍しい歓喜天の石塔が
残されていることだ

筑波山に嬥歌カガイという伝統が嘗てあった
カガイの夜は年齢・未婚既婚を問わず
誰もが自由に一夜の性の楽しみを
享楽することが許されていたそうだ
こぞって人々は山に登り
女房は亭主を
亭主は女房をおいて良い相手を物色し
酒を飲み乱痴気騒ぎの狂乱の中
あちこちで
老人が年端もいかぬ娘を抱いたり
艶かしさの残る老婆が青年と
卑猥な遊びに夢中になるという有様

カガイはそれこそ古代からあったようだが
そこに後から入ってきた密教が結びつき
信仰形態として確立していったらしい
歓喜天というヒンドゥー教の神が
仏像として信仰の象徴となり
聖天信仰といって全国に拡がっている

歓喜天は像の頭を持つ神が
抱擁し交合した姿で描かれる
あの悟りすました仏像達とはえらい違いなのだ
あまりにエロいので各寺では秘仏にして
見せないようにしているらしい
ここ鳥見神社にある石塔は
何気なく参道脇に置かれていて
写真撮影もオッケー
絡めあう腕と鼻
恍惚の表情が何ともいい感じ

カガイ的な風習が此処らにもにあったのかは
もう解りはしないが
江戸時代のものらしい神社建築にも
エロスな仕掛けが施されている
拝殿の裏面の彫刻だ

二十四孝という中国の書物があって
孝行が特に優れた人24人の
エピソードを綴るつまらない書だが
その中の唐夫人という女性の話
唐夫人の姑は年老いて歯が無くなって
物が食べれなくなって
どんどん衰弱していく
唐夫人は自分の乳を飲ませ
姑を救った
というなんだかよくわからない話

これが壁面に彫られているのだが
どう見ても乳を吸っているのは
衰弱した老婆ではなくギラギラした男の姿で
乳房を露わに乳首を吸われている唐夫人も
なんだか恍惚の表情をしているように見える
一見儒教的な厳正さを示す素振りで
実はエロスを喚起するという仕掛け
歓喜天とこのような壁の彫刻が
セットになっているところが多いらしい

悪神ビヤナカは世界に疫病をもたらし
人々は苦しみ次々と死んでゆく
人々の祈りに観音様が応える
観音様は美しい女性の姿となって
ビヤナカの前に現れる
ビヤナカの淫心は燃えさかり
彼女に迫った
彼女は言う
私の体が欲しいなら
仏法を守り人々を苦しめないと約束しなさい
ビヤナカは了解し
至上の恍惚状態を得続けている
観音様はそれを受け止め続けている
それが歓喜天

中身は兎も角
歓喜天にしても庚申講にしても
神社のお祭りもそうだな
人を結びつけ集わせる仕組みであったのだろう
このニュータウンに引っ越してきたたくさんの人を
結びつける仕組みは今あるだろうか

鳥見神社

鳥見神社

鳥見神社

鳥見神社
千葉県白井市富塚694