胡録神社2014年11月27日 22時50分33秒


整然としたマンション群
規格された街路
どこか高い所で
母親が布団を叩く音
呆然と
いつまでも横断歩道を渡れない
手押し車の老婆

大規模な再開発によって
生まれ変わった街
区画割から全て真っ更に
過去の名残をほぼ完全に消し去った街

この無機的な空間を打ち破るように
忽然と
神社が現れる
木造の社には
またもやあの第六天が鎮座する

戦に敗れ流れ着いた武士団
彼らはこの地を開墾し
ここを永住の地とした
江戸切り絵図では
この地が田んぼであったことを確認できる

明治以降だろうか
徐々に民家が増え始め
昭和の航空写真では
密集した民家が町を形成しているのを確認できる

空襲を逃れたこの町は
戦後も長くその雰囲気を保ち続け
ノスタルジックな町全体を文化財さながらに
メディアが取り上げたこともあったという

江戸の端っこ
川のカーブの末端
逃げてきた者にとっては相応しい地であったろうか
恐らくは
他社の侵入を排し
為政者の支配を拒み
独自のルールの下
彼らは生活を続けた
時に
外界で生きられない者が境を超える
第六天がそんな人々を受け入れる

閉ざされた世界とその境界は
行政と巨大資本の結託でほぼ完全に破壊された
密集した木造建築は次々に解体撤去され
一時は茫漠たる草地が広がっていたという
住民は懐かしい住み慣れた家から
等価交換によるマンション住まいを選択した
町の境界は消え去り
人々はハコの中の閉空間を目指す

第六天が結びつけるコミュニティが
今も有効なのかは私は知らないが
少なくともこの立派な木造の社は
土地の記憶を亡霊のように蘇らせ
どこまでも自閉していく時代に抗う

胡録という名前は
尤もらしく色々言われているが
ダイロクテンの大が駄目なら小にするさ
ってくらいな話なんじゃないかな
胡という字には
「でたらめ」「いいかげん」という意味もあるらしい
あなたたちが禁じるダイロクテンではない
でたらめなロクテンなのさと
なんとも人を食ったネーミングではないか
権力者の力には
こうやって抗うべきだ



胡録神社
東京都荒川区南千住8-5-6

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