甲子園素盞鳴神社2016年03月13日 10時56分52秒


夜が明けた
光が満ちる
血の海
酒の匂いと血の匂い
男が一人立っている
高く翳した剣
男は一人立つ

人々が集まり始める
誰もがヒーローの誕生に歓喜する
何千何万
誰ともなく
ヒーローの名前が呼ばれる

スサノオ!スサノオ!スサノオ!
傍らに寄り添うのは美しい奇稲田姫
スサノオ!スサノオ!スサノオ!
何とも頼もしいその顔
スサノオ!スサノオ!スサノオ!
皆が拳を振り上げる
スサノオ!スサノオ!スサノオ!
シュプレヒコールは鳴り止まない

素戔嗚尊スサノオによる八岐大蛇退治
僕等は何処でそれを知っただろう
絵本の中か
長編アニメ映画か何かか
何れにしても
歴史の教科書には出てこない
学校で教わった記憶はない

現存する最古のオフィシャルな国史である日本書紀
神代としてスサノオの活躍が記されているが
歴史学的には神話として
つまり作り話として片付けられている
歴史学者は
ゼロからこんなお話を作れる様な
優れたストーリーテラーが嘗て
存在していたとでも言うのかしら

何らかのモデルは存在し
何らかのエピソードがあった
長い時間の中で
少しづつ変容し乍ら
口伝は繰り返され
時の権力者に都合よく
改竄されまとめられたというのが
本当のところではないだろうか

スサノオを祀る神社は
日本中に広く分布し
その数は数万とも数十万とも
今や誰も数えることができない
悪を滅ぼし
勢力を拡大していったヒーローは
各地で熱狂的に受け入れられた
そんな一時代がきっと在った

その後
権力者の交代があり
歴史学者の得意な時代になっても
スサノオを祀る神社は残る
人々のこのヒーローへの想いは
確実に現代にまで受け継がれている

甲子園球場のすぐ隣
甲子園素盞鳴神社がある
勝利を祈願し
ヒーローの登場を希求する
タイガースファンや高校球児で
賑わうそうだ

僕等はヒーローを待っている
口先だけのリーダーに辟易した僕等は
心震わすヒーローの登場を待っている
かつて日本が誕生したその時の
輝かしい未来を予感させた
あのスサノオのような

「ヒーローのいない時代は不幸だが
ヒーローを求める時代はもっと不幸だ」(寺山修司)

甲子園素盞鳴神社

甲子園素盞鳴神社

甲子園素盞鳴神社

甲子園素盞鳴神社
兵庫県西宮市甲子園町2-40