出雲大社東京分祀 ― 2014年08月01日 14時29分25秒
青木繁という画家の「オオナムチ」という絵画がある
裸で横たわる男の傍には二人の女がいて
女の一人は自らの乳房を掴み
そしてじっと僕を見る
勇者であったのだろう
オオナムチこと大国主命は
国造りの大業を成し遂げ
たくさんの妻を娶った
ぼくは美しい妻を探していたんだ
越国にはあなたが
美しいあなたがいることを知った
何度でも行くよ
あなたの所へ行くよ
ぼくはあなたの寝ているその寝顔が見たくて
もう抑えられなくて
あなたの住むこの家を揺すってる
鳥達が鳴く
鵼が鳴く雉が鳴く鶏が鳴く
誰か鳥達を打ち殺し鳴き声を止めてくれ
ぼくはあなたの声が聞きたい
わたしの心は鳥です
渚であなたを探し求めて鳴く鳥です
もうきっとすぐにあなたの心に飛んでいくのだから
どうかあの鳥達は殺さないでね
真黒い夜が来たら
あなたは朝日のように笑ってね
そして沫雪みたいに白いわたしの乳房を
優しく
でも強く
あなたは掴んでくれるわ
わたしは腕枕をしてあげて
あなたは足を伸ばして眠るの
だから今は
真黒い夜が来たら
千年前のラブソング
古代日本人は
思いを伝える為に美しい言葉を駆使し
お互いに歌い合い
解り合い確かめ合った
時代はこんなにも過ぎたのに
ケータイやらメールやら手段はこんなにあるのに
裸で横たわる男の傍には二人の女がいて
女の一人は自らの乳房を掴み
そしてじっと僕を見る
勇者であったのだろう
オオナムチこと大国主命は
国造りの大業を成し遂げ
たくさんの妻を娶った
ぼくは美しい妻を探していたんだ
越国にはあなたが
美しいあなたがいることを知った
何度でも行くよ
あなたの所へ行くよ
ぼくはあなたの寝ているその寝顔が見たくて
もう抑えられなくて
あなたの住むこの家を揺すってる
鳥達が鳴く
鵼が鳴く雉が鳴く鶏が鳴く
誰か鳥達を打ち殺し鳴き声を止めてくれ
ぼくはあなたの声が聞きたい
わたしの心は鳥です
渚であなたを探し求めて鳴く鳥です
もうきっとすぐにあなたの心に飛んでいくのだから
どうかあの鳥達は殺さないでね
真黒い夜が来たら
あなたは朝日のように笑ってね
そして沫雪みたいに白いわたしの乳房を
優しく
でも強く
あなたは掴んでくれるわ
わたしは腕枕をしてあげて
あなたは足を伸ばして眠るの
だから今は
真黒い夜が来たら
千年前のラブソング
古代日本人は
思いを伝える為に美しい言葉を駆使し
お互いに歌い合い
解り合い確かめ合った
時代はこんなにも過ぎたのに
ケータイやらメールやら手段はこんなにあるのに
今僕はあなたに100万分の1も
思いを伝えられないでいる
思いを伝えられないでいる



出雲大社東京分祀
東京都港区六本木7-18-5
二社神社 ― 2014年08月09日 21時44分00秒
足を踏み入れるのにも躊躇するような
何方かの居宅と居宅の隙間の奥の
さらに何方かの居宅の玄関の傍に
その神社はある
由緒書きなどある訳もなく
出自不明な小祠
東京の街にはこんな神社が無数にある
二社神社という名前だけが手掛かり
当然二つの神社が合祀されているという意味だろう
日本人は神社を勝手に動かすのを憚る
そんな心理がどこかで働く
周りの人も家も移り変わっていく中で
神社だけはそこに残り
遠い過去を現在に伝える装置となる
ネットで閲覧可能なので(goo古地図)
江戸切り絵図という古地図を見てほしい
何方かの居宅と居宅の隙間の奥の
さらに何方かの居宅の玄関の傍に
その神社はある
由緒書きなどある訳もなく
出自不明な小祠
東京の街にはこんな神社が無数にある
二社神社という名前だけが手掛かり
当然二つの神社が合祀されているという意味だろう
日本人は神社を勝手に動かすのを憚る
そんな心理がどこかで働く
周りの人も家も移り変わっていく中で
神社だけはそこに残り
遠い過去を現在に伝える装置となる
ネットで閲覧可能なので(goo古地図)
江戸切り絵図という古地図を見てほしい
現在の二社神社のあるあたりには
榊原式部大輔の下屋敷があり
秋葉社と稲荷の2社が隣接してるのが確認できる
恐らくはこの2社が合祀されたものと見て間違いない
見方を変えると
この二社神社の存在によって
榊原式部大輔の下屋敷がかつて
此処にあったということを実感させてくれる
榊原康政は徳川家康に仕え
徳川四天王とも呼ばれた武将
歴史の中で榊原家の人々が
この下屋敷を捨てて出て行った場面がきっとあった
侍の時代は終焉を迎え
その子孫達の行く末は知らない
新潟県上越市に
榊原康政を祀る榊神社という神社があるらしい
廃藩置県で高田藩が廃止となった明治四年に
家臣達が広く領内で寄付を募って建立したそうだ
案外榊原家の人々が
この古石場の下屋敷を捨てるにあたって
その痕跡を未来へ伝えようと
我らが始祖康政を合祀し
そして何処かへと消えていった
なんていうお話の方が面白いなあ
榊原式部大輔の下屋敷があり
秋葉社と稲荷の2社が隣接してるのが確認できる
恐らくはこの2社が合祀されたものと見て間違いない
見方を変えると
この二社神社の存在によって
榊原式部大輔の下屋敷がかつて
此処にあったということを実感させてくれる
榊原康政は徳川家康に仕え
徳川四天王とも呼ばれた武将
歴史の中で榊原家の人々が
この下屋敷を捨てて出て行った場面がきっとあった
侍の時代は終焉を迎え
その子孫達の行く末は知らない
新潟県上越市に
榊原康政を祀る榊神社という神社があるらしい
廃藩置県で高田藩が廃止となった明治四年に
家臣達が広く領内で寄付を募って建立したそうだ
案外榊原家の人々が
この古石場の下屋敷を捨てるにあたって
その痕跡を未来へ伝えようと
我らが始祖康政を合祀し
そして何処かへと消えていった
なんていうお話の方が面白いなあ



二社神社
東京都江東区古石場2-7-3
澤蔵司稲荷 ― 2014年08月24日 15時00分05秒
夢を見た
あいつは狐だったのか
優秀な男であった
気のいい
真面目な男であった
蕎麦屋の親父もこれで納得するだろう
あいつの払った銭が
気付くと葉っぱになってたなんて
これで諦めもつくだろう
狐のくせに
仏法を学びたいなんて
頗る愉快な男であった
稲荷神社は全国に約3000社
境内社など加えると32000社を超えると言われ
さらに屋敷神、山野や道端の小祠を加えるとなると
あいつは狐だったのか
優秀な男であった
気のいい
真面目な男であった
蕎麦屋の親父もこれで納得するだろう
あいつの払った銭が
気付くと葉っぱになってたなんて
これで諦めもつくだろう
狐のくせに
仏法を学びたいなんて
頗る愉快な男であった
稲荷神社は全国に約3000社
境内社など加えると32000社を超えると言われ
さらに屋敷神、山野や道端の小祠を加えるとなると
稲荷神社の数はもう誰にも把握不可能だ
精神異常か鬱病かは知らないが
江戸時代には狐憑きが現れるたびに
稲荷社を建てたなんていう話だ
明治政府の神仏分離令によって
怪しげな信仰形態は悉く排斥される
智慧ある者達はその神様を
なんちゃら稲荷と改名したり
祭神に倉稲魂命ウカノミタマノミコトを迎え入れ
生き残りを謀ったりした
伏見稲荷のように神道の正当を誇るものもあれば
豊川稲荷を始めとする仏教寺院としての稲荷もある
祭神も倉稲魂命だけでなく
保食神や豊受姫が同一視される説もあり
しまいには狐が神様になってたりと
稲荷信仰の全容はもう誰にも把握が不可能だ
ここ澤蔵司稲荷は伝通院の境内社であった
そのため境内には菩薩像が祀られたりと
柏手も憚られるほど仏教色が濃い
だけど神道だの仏教だのと
やたら分類したがるのは
高度経済成長からバブルを経て
デフレとコンプライアンスですっかり
脳が萎縮してしまった現代人の悪い癖で
ここに来ると
昔の人の信仰のカタチが見えるような気がする
社の裏手は一段低い森になっている
足を踏み入れると
真夏の都会にいるとは思えない程
ひんやりとして薄暗い
森の中には幾つもの小祠が並び
中でもひと際目立つ霊窟と書かれた社がある
小さな無数の狐が祀られていて
恐らくは狐の住む穴が
信仰の対象になったものなのだろう
東京はほんの少し前まで狐の住む街だったのだ
学僧となった狐は夜な夜な
蕎麦屋で天ぷらソバを食べていたという
その蕎麦屋は今も営業中だ
狐の魂は近くのムクノキに宿ったという
その木は戦火をくぐり抜け現存している
車道敷設の際には木を除けて道を通したという
きっと今でも狐達は人間の社会に潜り込んで
何食わぬ顔で天ぷらソバなど喰ってるに違いない
たまにどうしても言葉の通じない輩がいて
こいつ人間か?と思う時が誰にでもあると思うが
奴等は案外
調子に乗った狐なのかもしれないぜ
精神異常か鬱病かは知らないが
江戸時代には狐憑きが現れるたびに
稲荷社を建てたなんていう話だ
明治政府の神仏分離令によって
怪しげな信仰形態は悉く排斥される
智慧ある者達はその神様を
なんちゃら稲荷と改名したり
祭神に倉稲魂命ウカノミタマノミコトを迎え入れ
生き残りを謀ったりした
伏見稲荷のように神道の正当を誇るものもあれば
豊川稲荷を始めとする仏教寺院としての稲荷もある
祭神も倉稲魂命だけでなく
保食神や豊受姫が同一視される説もあり
しまいには狐が神様になってたりと
稲荷信仰の全容はもう誰にも把握が不可能だ
ここ澤蔵司稲荷は伝通院の境内社であった
そのため境内には菩薩像が祀られたりと
柏手も憚られるほど仏教色が濃い
だけど神道だの仏教だのと
やたら分類したがるのは
高度経済成長からバブルを経て
デフレとコンプライアンスですっかり
脳が萎縮してしまった現代人の悪い癖で
ここに来ると
昔の人の信仰のカタチが見えるような気がする
社の裏手は一段低い森になっている
足を踏み入れると
真夏の都会にいるとは思えない程
ひんやりとして薄暗い
森の中には幾つもの小祠が並び
中でもひと際目立つ霊窟と書かれた社がある
小さな無数の狐が祀られていて
恐らくは狐の住む穴が
信仰の対象になったものなのだろう
東京はほんの少し前まで狐の住む街だったのだ
学僧となった狐は夜な夜な
蕎麦屋で天ぷらソバを食べていたという
その蕎麦屋は今も営業中だ
狐の魂は近くのムクノキに宿ったという
その木は戦火をくぐり抜け現存している
車道敷設の際には木を除けて道を通したという
きっと今でも狐達は人間の社会に潜り込んで
何食わぬ顔で天ぷらソバなど喰ってるに違いない
たまにどうしても言葉の通じない輩がいて
こいつ人間か?と思う時が誰にでもあると思うが
奴等は案外
調子に乗った狐なのかもしれないぜ



澤蔵司稲荷
東京都文京区小石川3-17-12
亀戸天神社 ― 2014年08月31日 14時56分27秒
俺達は亀戸駅の方からだよ
今から天神さんの裏さ
今日は金が入ってね
いい女がいるんだよ
でもアンタ気をつけなよ
中には歯の抜けたババァや
変な痣だらけの女もいるからね
何たってあそこには
店が千軒もあるからさ
何だって
アンタ何言ってんだ
小林さんが獄死
拷問か
何だよ
アンタ特高かい
昭和の初め
亀戸天神の裏手は
遊郭と私娼窟がひしめき合う不夜城であった
日が暮れるのも待たず
街は脂粉の薫りに包まれる
明治十年代から目覚ましく発展した工場地帯
工場労働者達は挙ってこの街を目指した
東京大空襲で焼け野原になるまで
有数の色町として隆盛を誇ったが
戦後の高度経済成長に飲み込まれるように
亀戸周辺の工場は徐々に他へ移転し始め
跡地には続々と団地が建ち並ぶ
追うように店を閉める料亭
売春防止法により完全に灯りを消す赤線地帯
菅原道真は無実の咎により罪を被った
そのため妄言を激しく嫌う
天満宮を訪れる人達は皆
心に邪心を隠してお参りするのが見えるので
道真は永遠に北を向いてしまったのだそうだ
道真は
亀戸天神の北面に位置するこの色町の変遷を
きっと静かに見つめていたに違いない
人々に対する罰などは無かっただろう
そこには嘘は無かったから
これから先
もっともっと罪深い
虚言と妄言による煽動や悲劇が
この国に起き続けるのだから
今から天神さんの裏さ
今日は金が入ってね
いい女がいるんだよ
でもアンタ気をつけなよ
中には歯の抜けたババァや
変な痣だらけの女もいるからね
何たってあそこには
店が千軒もあるからさ
何だって
アンタ何言ってんだ
小林さんが獄死
拷問か
何だよ
アンタ特高かい
昭和の初め
亀戸天神の裏手は
遊郭と私娼窟がひしめき合う不夜城であった
日が暮れるのも待たず
街は脂粉の薫りに包まれる
明治十年代から目覚ましく発展した工場地帯
工場労働者達は挙ってこの街を目指した
東京大空襲で焼け野原になるまで
有数の色町として隆盛を誇ったが
戦後の高度経済成長に飲み込まれるように
亀戸周辺の工場は徐々に他へ移転し始め
跡地には続々と団地が建ち並ぶ
追うように店を閉める料亭
売春防止法により完全に灯りを消す赤線地帯
菅原道真は無実の咎により罪を被った
そのため妄言を激しく嫌う
天満宮を訪れる人達は皆
心に邪心を隠してお参りするのが見えるので
道真は永遠に北を向いてしまったのだそうだ
道真は
亀戸天神の北面に位置するこの色町の変遷を
きっと静かに見つめていたに違いない
人々に対する罰などは無かっただろう
そこには嘘は無かったから
これから先
もっともっと罪深い
虚言と妄言による煽動や悲劇が
この国に起き続けるのだから



亀戸天神社
東京都江東区亀戸3-6-1
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