高木神社2015年01月31日 19時19分02秒


突然に空が掻き曇ったかと思うと
雲の上で何千という馬が駆け回る音
真っ黒で分厚い雲を掻き分けて
玉や黄金で飾られた楼閣が姿を現わす

そこは会議場であった
まだ開始前の騒ついた中
集まった者たちは皆一様に
異様な姿をしている

ある者は八本の腕に六本の足
一つの頭に三つの顔
鉄の盾と金の鎧を身に纏う

そして上座には
20mはあろうかという巨人が
轟音を立てて席に着いた
十二ある顔が
二十四の眼球が
列席を睥睨している

会議が核心に迫ったその時
奴が現れる
黒い兜の前面に金文字で書かれたその名
第六天魔王

奴は野太い声でこう言い放った
俺が後鳥羽院の心に
鎌倉幕府滅亡の欲を
たっぷりと注ぎ込んでやるさ

その後
第六天が言った通り
後鳥羽院は
時の執権北条義時追討の院宣を発布
挙兵する
世に言う承久の乱である

天皇をも狂わせ
世を乱すパワーを持つ魔王が
なぜ民衆によって信仰されていったのか
都内だけ見ても第六天を祀る神社は
いわゆる江戸の町の周辺部に数多く見られる

承久の乱の後
行政の覇権を巡って
混乱の歴史が続いていく
二つに分かれる朝廷
天下統一を目指し戦乱を繰り返す武士達
そんな歴史の表面には決して出てこない
行政の混乱に翻弄される民衆の姿
慎ましくも逞しく
変えることのできないこの現状を打開してくれと
最強の魔王に縋ったのかもしれない

押上にある高木神社は
かつて第六天を祀る神社であった
昔この辺りは寺島村といって
新田開発による農地が広がっていたらしい
恐らく明治政府による淫祠廃止の令を受け
皇室の祖神の一つである
高皇産霊神タカミムスビノカミに
今はその座を静かに譲っている

高木神社

高木神社

高木神社
東京都墨田区押上2-37-9

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