水稲荷神社〜将門調伏①2015年02月15日 13時58分46秒


将門は無敵だ
あいつの全身はまるで鋼なんだ
弓矢など屁の役にも立たない
お前はあいつの弱点を知っている
桔梗
あいつへの情がまだ残っているのか
何てことだ
桔梗
こっちへ来い
お前はもう俺のものだ
桔梗
言え

平将門が最も寵愛したという妃
桔梗は俵藤太秀郷に内通し
将門の秘密を教える
秀郷はしかしその後
桔梗を殺す

俵藤太秀郷は生没年不詳とされているが
将門を討った頃はかなりの高齢だったそうだ
百足退治の頃は快活な若者だったのだろうが
そんな片鱗は既になく
敵の妻をネチネチとたらし込む狡猾な印象
いつの世も老人のイヤラシさは救いがない

将門を討ったことで
彼は朝廷から絶賛を浴びたことだろう
なにせ将門謀反の報に宮中は大騒ぎで
歌を詠んだり蹴鞠をしたり
夜這いをするしか頭にない無能な貴族連中は
まるで絵に描いたように
あたふたするしかなかったのだから

朱雀天皇は将門滅亡を七大寺に祈祷させ
八大明神に調伏祈願を命じた
日本中で護摩を焚いたり呪文が鳴り響く
成田山新勝寺もこの時
将門調伏のため創基されたという

早稲田にある水稲荷神社も
将門調伏の伝説を持つ神社だ
将門討伐の翌年
俵藤太秀郷が富塚の地に稲荷大神を勧請したという
戦勝を記念したというが
何故こんな武蔵の国の古墳の上に
神社を建てるのが戦勝記念なのか
よく考えると
よくわからない

将門の寵妃桔梗の屍が埋められた土地には
桔梗の花は二度と咲かないと言われている
そんな桔梗の伝説は関東の広い範囲で伝播した
そして事実は様々な虚構へと変容していく

実は桔梗は秀郷の妹であった
桔梗の口を封ずるため秀郷が殺した
将門に桔梗が靡いたため嫉妬で秀郷が殺した
桔梗が密通したことを知り激怒して将門が殺した
優しさを失った将門を嫌い桔梗は自害した
などなど

桔梗は将門を裏切った悪女であるとか
秀郷に無理矢理手篭めにされた悲運の姫だとか
様々な伝承に様々な解釈で様々な物語が生まれたが
将門と桔梗の二人はやはり最期まで
お互いを思い続けていたという
ベタな結末を期待したい

今だって
大手町の将門首塚の傍には
皇居の桔梗門がそっと寄り添っているのだから

水稲荷神社

水稲荷神社

水稲荷神社

水稲荷神社
東京都新宿区西早稲田3-5-43

神田明神その3〜mement mori2014年09月20日 22時54分52秒

あいつは死んでしまった
手紙をもらったのが一年前か
大腸ガンだと書いてあった
俺にも精密検査行った方がいいですよと書いてあった
まだ行ってない
少しでも笑ってくれるかと
俺は神田明神の隣で買った
将門キューピーを送った
そしてこの夏
奥さんと三人のまだ小さい子供を残し
あいつは死んでしまった

悲しみの矢は突き刺さって抜けやしない
こめかみを貫いた矢のように

神道では死は忌避される
ケガレと捉え遠ざける
身内が死んだら五十日は神社に来るなと言う
死の前で神は無力を露呈する
長い歴史の中で
死の領域までカバーする仏教に
軍配が上がっていったのは当然かもしれない

だけど怒りと欲に満ちた無知な私達は
お釈迦様の言葉を理解できず
いつまでもお坊さんのお経をありがたがったり
意味不明の呪文に不思議な力を信じたりしてる

お経はもともとはお釈迦様の言葉で
その言葉は死んだ者への供養なんかではなく
はっきりと生きている者へ向けられている

明日とか昨日を妄想しないで
無常の今を生きろと言う
慈しみの心を持って
全ての生命の幸福を願えと言う
自分もまた必ず死ぬのだということを知り
悲しみを超え今を生きろと言う
その言葉は
とてつもなくポジティブで正しい

「家についた火を水で消し去るように、
智慧に満ちた賢者、巧みな人は、
湧き起こった悲しみを、
風が綿花を吹き払うように、即座に消す。

自分の憂い、未練、悲しみを引き抜くこと。
自分の幸福を求める者は、
刺さった箭を引き抜くのである。

箭を引き抜き、涼やかになり、
こころのやすらぎを得る。
一切の悲しみを乗り越えて、
悩みなき寂静に達する。」
(「箭経」アルボムッレ・スマナサーラ訳)
※箭:矢のこと。




神田神社
東京都千代田区外神田2-16-2

神田明神その22014年01月18日 17時27分12秒

神田明神の本殿の裏手には
幾つかの境内社や末社が並び
また神輿や鳳輦の倉庫がある

一之宮である大己貴命オオナムチノミコトと
二之宮である少彦名命スクナヒコナノミコトの
鳳輦と神輿二基が収まっている奉安殿
その入口はまっすぐ本殿に向かっている

ところが
三之宮である平将門の奉安殿は
大己貴命と少彦名命とは完全に切り離され
本殿の真後ろに
入口がほとんど90度横を向いて建っている
何故だか理由はわからない

大己貴命は大国主命の別名である
出雲大社の大国主命の神座は
拝殿に対して真横を向いているという
たくさんの人が神様の横顔に
参拝しているらしい
何故だか理由はわからない

古代から現代に至るまで綿々と
僕らはいつも本当のことを教えてもらえず
仕掛けられた支配者の思惑に
気付かず日々を過ごしているのかもしれない




神田神社
東京都千代田区外神田2-16-2

鬼王神社2013年09月29日 18時38分48秒

姉さん
あいつはこの俺に
吐き出したものを食わせようとしたんだぜ
俺はとんでもなく気持ちが悪くなっちまったんだ
だから叩き斬ってやったんだよ
何が悪いんだよ
なあ
姉さん

保食神ウケモチノカミを惨殺した
月読命ツクヨミノミコトの弁明に
アマテラスは激怒する

無惨にも切り捨てられた保食神の身体からは
穀物や米が溢れ出し
人々の永劫の繁栄を約束する

もうお前とは決して顔を合わせまい
お前は夜の国へ
私は昼の国へ

今上天皇へと脈々と繋がるアマテラスとは対象的に
月読命はこれきり記紀神話から姿を消す
三貴子の一人であるのに
これきり姿を消す

新宿に鬼王の名を冠する神社がある
熊野から鬼王権現が勧請されたという
鬼王権現とは
月読命、大物主神、天手力男命のことだという
なぜ鬼の王なのかさっぱりわからない
今や熊野には鬼王権現の痕跡はなく
何が何だかさっぱりわからない

そして
将門が登場する
将門の幼名が鬼王丸だという
ここは将門による結界の重要ポイントなのだという
神社の正式な由緒には将門の名は出てこない
何が何だかさっぱりわからない

天皇になれたかもしれない二人
天皇になり損ねた二人
そんな二人が
気の遠くなるような
歴史の中で交差し重なったのかもしれない

それにしても
この神社の境内はいつ来ても
心がざわつく
まるで
眩しい明け方の空に
残月を見つけた時のような



稲荷鬼王神社
東京都新宿区歌舞伎町2-17-5

第六天榊神社〜鳥越幻影④2013年07月07日 13時48分14秒

鳥越神社のある地は遠い過去
浅瀬に浮かぶ島であった
河が運ぶ土砂によって
周りが陸地となり
小高い丘が形成された

その丘にいつしか
日本武尊の東征の伝説とともに
三つの神社が置かれる
白鳥明神(鳥越神社)
熱田明神
そして第六天

日本武尊が第六天を祀ったという説もあるが
後世のこじつけであろう
とにかく江戸以前の住民に
熱烈に支持されていたことは確かだ

西からやってきた徳川幕府は
御蔵建設のため鳥越の丘を切り崩し
墨田川の岸を埋め立て
現在の日本橋あたりにいた弾左衛門と
その配下を鳥越に強制移住させる

さらに徳川の呪術師は
江戸城守護を目的に
平将門による結界を構築すべく
鳥越神社に将門の伝説を付与する

一方で第六天は蔵前に移されている
おそらく徳川の呪術師は
第六天のパワーを恐れたに違いない
あの織田信長が
我こそは第六天魔王なり
と豪語するほどの大魔王である
将門と同居させるなど何が起こるか想像もできない

その後
第六天は蔵前から柳橋へ移り
明治に榊神社と名を変え
現在の地に落ち着いたのは
昭和三年のことである

榊神社の紋は七曜紋
北斗七星を表しているらしい
平将門や千葉氏の九曜紋のバリエーションだという
鳥越神社の紋も同様の七曜紋
案外
隠された将門の伝説は
第六天とともに
ここに在るのかもしれない



第六天榊神社
東京都台東区蔵前1-4-3